研究・教育

2021.05.28 Report

社会人大学院生 西村拓哉 インタビュー

1.脳神経内科を目指した訳

私が脳神経内科を志した理由は、2つあります。1つ目は、rt-PA +血管内治療で劇的に改善する症例を経験したことです。私が大阪のとある市中病院で、初期研修医として最初にローテートした科が脳卒中内科でした。多くの救急搬送症例を経験した中で、発症間もない意識障害、右片麻痺、失語で左内頚動脈閉塞の方がおられました。当時Merciリトリーバーしかデバイスがありませんでしたが、1passで完全再開通を得てrt-PAも奏功し、歩いて自宅退院されました。医師として働き始めて間もない私にとって、それは大きな感動を覚える出来事でした。脳神経内科医になった後、治療に難渋する症例を多々経験することになるのですが、最初にそういった良好な転帰の症例を経験できたことが、脳神経内科を志す大きなモチベーションになったと思います。

2つ目は、治療のために多職種と連携する科であることです。脳卒中患者のゴールは退院ではなく、社会復帰です。初期研修病院は回復期リハビリテーション病棟があり、リハビリの施設や人員も充実していたため、急性期から慢性期まで幅広く患者を診ることができました。退院時には看護師、薬剤師、セラピスト、MSWで退院支援カンファレンスを開き、必要があれば自宅訪問して手すりの設置などバリアフリーに改装するアドバイスまで行い、外来でフォローしていきます。「小医は病を癒し、中医は人を癒し、大医は国を癒す」という中国の有名な諺がありますが、まさに中医を地で行く、人を癒す仕事だと思いました。それまで医学生として紙の上の勉強しかしていなかった私にとって、180度医師のイメージが覆される経験でした。もちろんまずは、小医としてしっかり目の前の病気を治療することが大事ですが、1人の医師として、その患者様の人生を支えることができる仕事であるところに、脳神経内科医としての大きな魅力を感じました。

2.10年後の自分像

 正直、想像がつきません…。勤務医であれば、私が一番得意とする脳神経超音波の技術を生かしながら、脳卒中をメインに神経疾患も幅広く診る脳神経内科医でありたいです。勤務医でなければ、多職種と連携して何か新しいことにチャレンジしてみたいです。

3.どうして大学院に入学しようと思ったのですか?

 当科は木村教授のもと、リサーチマインドに溢れる医局です。データベースがしっかりしているため、良い意味で臨床研究のハードルが低く、症例数も豊富なため、アイデアを形にしやすい環境が整っています。また、国際学会での発表や臨床研究の経験豊富な先輩方がたくさんおられ、充実したサポートを受けることができます。臨床研究をやりたくてもできない医局が全国にたくさんある中、この環境でチャレンジしないのは勿体ないと思いました。

4.先生は、かの有名な国立循環器病研究センターから来ましたが、日医のいいところを教えてください。

 答えにくい質問ですね(笑)。勿論、国立循環器病研究センターにも日医にも良い点、悪い点があると思います。言葉で表すのは難しいのですが、日医は柔らかい雰囲気なのに、国際学会の発表や、インパクトファクターの高い雑誌に何本も論文を載せていたり、大学病院で日本一血管内治療や脳神経超音波検査を行っているのが良いところだと思います。神経疾患と脳卒中は、病気の時間経過が真逆のため、お互いのグループの垣根が高い医局が多いと思いますが、日医にかぎっては全くそういうことはありません。本当に和気藹々とした居心地の良い医局だと思います。

5.休みの日は何をしていますか?

 休日はドライブやサイクリング、美術館巡りをして新婚生活を楽しんでいます。医局員が多いため、オンとオフをしっかり分けられるのも良いところだと思います。